3月3日は桃の節句、ひな祭りですが、“耳の日”でもあります。難聴と言語障害を持つ人の悩みを少しでも解決することを目的として、1956年に日本耳鼻咽喉科学会が提唱して制定されました。3と3,で “みみ” という語呂合わせと、3が耳の形に似ているということで、3月3日に決まりました。
さて、昨今耳の疾患で最も大きな問題は、イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)と呼ばれる音響性難聴(音響外傷)です。 WHOは携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどによって、世界中で11億人もの若者(12-35歳)がイヤホン難聴のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしています。 もちろん、イヤホン難聴は若者に限らず、イヤホンやヘッドホンを使用する全年齢層に起こる可能性があります。 大きな音を長時間聴き続けると、耳の奥(内耳)にある有毛細胞が傷つき壊されて、音を脳に伝えることが出来なくなり、聴力の低下が起こります。
イヤホン難聴は、ゆっくり進行して少しずつ両耳の聴力が低下するため、初期には自覚症状がなく気が付きにくい特徴があります。しかし、有毛細胞が完全に破壊されてしまうと聴力は回復しません。 そのため、日ごろの注意と予防が非常に重要です。
WHOは、80dB(デシベル)で1週間あたり40時間以上聴き続けると難聴になる危険性があるとしています。これは1日に換算すると約5時間半ですが、あくまで目安ですので5時間半以内であれば大丈夫ということではありません。因みに80dBは、電車の車内や交差点での自動車の騒音程度の音です。イヤホン難聴の予防ですが、先ずは難聴になりにくい習慣をつけることが大切です。 音量を上げすぎず、連続して聴かないこと(イヤホンで音楽などを聴いていても外部の会話が聞こえるくらいの音量が目安)ですが、より確実なのは、音量の出力制限装置が付いた機器を選ぶことです。
また、1時間聴いたら最低5-10分は休むこと、イヤホンの使用を1日1時間未満に制限すること、使わない日を作ることも効果的です。 さらに、周囲の音を低減する、“ノイズキャンセリング機能”が付いたイヤホンを選ぶことも推奨されます。 その他、イヤホンを付けたまま寝ることは、小さな音量でも長時間聴き続けることになりますので耳への負担がかなり大きく、好ましい習慣ではありません。
難聴の初期症状は、耳鳴りや耳が詰まった感じ(耳閉感)などが多いと言われています。症状が出てから1週間以内に的確な治療を行わないと聴力が回復しないため、耳に違和感が生じた時は、大至急耳鼻咽喉科を受診することが必要です。 耳に優しい聴き方を習慣にして、心を癒すようにしましょう。
産業医 佐藤 潤一