黄砂(こうさ、おうさ)はゴビ砂漠やタクラマカン砂漠など乾燥した地域の土壌・鉱物粒子が強風を伴う砂塵嵐(砂嵐)などにより巻き上げられ偏西風に乗って日本に飛来し大気中に浮遊あるいは降下する現象で、健康障害だけでなく農作物や交通にも影響をもたらしたり、車や洗濯物を汚すなど様々な被害を起こします。
黄砂は一年中飛来しますが、砂漠地帯の雪解けで砂が巻き上げられやすく偏西風が強い3月から5月が多い時期で時には空が黄色くなることもあります。黄砂は特定の物質ではなく、土壌に由来する石英や長石などの鉱物や雲母などの粘土、さらに飛来する間に取り込まれた大気汚染物質が含まれた砂のことです。粒径は長径4μm前後であり、花粉が30μm前後ですので非常に小さな粒子です。
さて、黄砂による健康への影響ですが、非常に小さな砂粒のため、空気と共に吸い込み気道の奥の方まで到達して気管支を刺激し喘息や気管支炎などの呼吸器疾患を起こします。また、大量の化学物質が付着しているため、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、結膜炎などのアレルギー症状が生じます。さらに、詳細なメカニズムは解明されていませんが心筋梗塞など循環器疾患の発症にも関係すると言われています。黄砂が飛来する時期はスギやヒノキの花粉症と重なるため、黄砂と花粉が同時に体内に入るとアレルギーを引き起こす抗体の産生が増強されアレルギー症状が強くなり重症化する危険性もあります。
健康障害の予防法としては黄砂を身体の中に入れないことが基本です。マスクやゴーグルを使用することが一般的な対策ですが、粒子が非常に小さいためマスクを二重にすることやメッシュが細かな高性能マスク(ウイルス対策用マスク)を使うことも推奨されています。さらに、室内が乾燥していると黄砂が空気中にいつまでも浮遊してしまうため加湿器や空気清浄機を使うことも有効です。また、部屋に入る前に服や髪の毛をはたいて室内に黄砂を持ち込まない注意や手洗い、うがい、顔を洗うことも大切です。さらに、気象庁や環境省のホームページや天気予報などで黄砂予測・飛来状況をチェックして飛散量が多い時は大量の吸い込みを避けるため屋外での激しい運動を控えるようにしましょう。
地球温暖化の影響で飛来頻度が高まり被害も拡大してきています。今まで以上に黄砂に注意することが健康上重要です。
産業医 佐藤 潤一