我が国では毎年およそ1万人の人がインフルエンザに罹患していますが、これは国民の8%がかかっていることになります。しかも年間1,000人以上の方がインフルエンザで亡くなっていますし、重症化して肺炎や脳炎を合併した方を含めると10,000人前後が死に至る恐ろしい感染症です。
新型コロナ感染症が流行した2020年から3シーズンは世界中でインフルエンザの流行は認められませんでした。しかし、新型コロナ感染症が落ち着いてきた2022/2023年のシーズンから再び流行が認められるようになってきました。
従来我が国では11月下旬から感染者が徐々に増加して、2月頃にピークとなり4-5月頃に落ち着く流行パターンが一般的でした。しかし、2022/2023年のシーズンは流行が終息することなく2024年の夏まで発生が報告されています。このような従来とは異なった流行の原因は明らかではありません。
インフルエンザウイルスは低温と乾燥を特に好みますので、四季のある地域では寒い季節に感染が拡大する傾向があります。そのため、予防対策には本格的な流行が始まる冬になる前にワクチン接種を行うことがとても重要です。
インフルエンザは感染力がとても強いため、家族内感染や学校・職場内感染を起こす危険性が少なくありません。インフルエンザ感染が拡大すると、学級・学校閉鎖、企業活動などにも影響を及ぼし、ひいては社会・経済活動にも関係します。
我が国のインフルエンザワクチン接種率は全体平均で32.6%、世界的にみても高い水準にあると言われています。年代別では65歳以上で54.8%、次いで1-6歳が48.3%と報告されています。しかし、13-65歳では23.3%と最も接種率が低くなっています。
そのため感染拡大防止のためには、小児や高齢者だけでなく全年齢層でワクチン接種率を上げることが非常に重要です。昨年まではワクチン接種は皮下注射のみでした。しかし、今シーズンからは2-19歳未満には鼻スプレー式のワクチンが使えるようになりました。
生ワクチンのため今までの不活化ワクチンとは異なった副反応もありますが、重症化予防効果だけでなく発症予防効果も高いため、痛みを極端に嫌う子供などには検討の余地があると思われます。
インフルエンザワクチンは製造・認可の関係で10月1日以降接種が可能となります。予防接種は自費ですが、公費や健保の補助など費用の点も含めて早めに接種計画を立てることが好ましいと考えられます。
新型コロナ感染症も終息していませんので、同時感染を防ぐためにもインフルエンザ予防接種を積極的に受けるようにしましょう。
産業医 佐藤 潤一