第12回体質は遺伝する、習慣は伝染する。―みなさんの「当たり前」は大丈夫？―

保健師今井真美

先日、同級生の結婚式で久々に実家の愛媛に帰った時のことです。
父が「最近みかんの花の剪定で農作業が忙しいのに、また太ってきた」と言っていたのですが、父の食事のペースを見てびっくりしました。早い、早過ぎる。晩酌の枝豆も一莢（ひとさや）口に入れたら噛んで呑み込めばいいものを、ハムスターのように大量に口に入れてからまとめて噛もうとしています。そして父の食事は主に祖母が準備しているのですが、祖母にとっては今年還暦を迎える父も何歳になっても息子です。運動部の高校生が食べる量を準備しています。そうでした、私の実家は太る習慣が伝染している家です。

【山に筍狩りにいく父】

私の一家は、ヘビースモーカーの祖父以外は全員肥満でした。
身長と体重から算出したBMIという数値があります。【体重（㎏）÷身長（m）÷身長（m）=BMI】（ちなみに標準体重のBMIは22です。）ピーク時のそれぞれのBMIは、私がBMI25でⅠ度肥満。父はBMI30でⅡ度肥満。祖母にいたってはBMIが35以上ありましたのでⅢ度肥満です。
私たちが肥満一家だった時の、太る生活習慣を振り返ってみようと思います。

・牛乳は毎日1リットル　
・朝食は菓子パン2個　　
・白米は何杯おかわりしてもOK　
・野菜は気が向いたら食べる程度　
・お肉の頻度と量は多め
・食べ終わるまでに10分程度
・うどんは一食2玉以上が標準
・水、お茶の代わりにジュースで水分補給
・夕食後にはデザートでお菓子、果物
・お菓子は安売りの時にまとめ買いして大量にストック
・ビール350ml2-3本飲んでから日本酒2合を毎日
・外出はバイクか車
・運動は疲れるのでしません

今思うとツッコみどころしかない生活習慣ですが、当時の私たちはこの環境が「当たり前」だったのです。親の当たり前は、子どもの私にも伝染していました。食事も買い物も、家族そろって毎日この「当たり前」を繰り返していました。

健康相談をさせていただくと、十人十色の「当たり前」がある事に気が付きます。

「え？コンビニで水・お茶を買うのはもったいないですよね？！ジュースを買う以外は考えられない。」

「朝食に菓子パン以外を食べるなんて…じゃあ何を食べればいいのですか？」

「自分の父がやっていたように、大盛りの白米を一気に食べるのが普通だと思っていて。男はそうやって食べるのがカッコいいと思っていました。」

などなど。ご家族の生活習慣はその人の「当たり前」となって伝染していくのですね。

ちなみに私たち肥満一家は、「当たり前」の生活習慣が良くなかったので、ほんの少し生活習慣を変えるだけで全員劇的に痩せていきました。

・間食をやめて、口さみしくなったら歯磨きをする
・白米のおかわりをしない
・一日20分多く歩くようにする

これだけの事でも体重は変わっていきます。

【愛媛のキウイ畑　山の斜面にあって農作業での運動量は多いはずですが…】