同友会メディカルニュース

2015年6月号
アサーショントレーニング(良好な対人関係構築のためのトレーニング)

近年、職場や日常生活において、メンタル面でのトラブルを抱える人も多い傾向にありますが、自分の意見をもっと上手に伝えることができれば、ストレスの多い状況を改善でき、特に職場においてのストレス軽減は、業務の効率アップにつなげられることと思います。

今回は、自分の考え、意見、要求、気持ちなどを率直にその場の状況にあった適切な方法で述べ るコミュニケーション術「アサーション」をご紹介します。

1.アサーション・トレーニング

状況に応じて適切な自己表現ができるように自分の行動をトレーニングすることを、アサーション・ トレーニング(アサーティブネス・トレーニング)といいます。

自己表現の方法には大きく分類して、非主張的自己表現・攻撃的自己表現・アサーティブな自己表現、の3つの方法があります。

■非主張的自己表現 (受け身的)

「非主張的」とは、自分の気持ちや考え、信念を表現しなかったり、しそこなったりすることで、自分から自分の言論の自由を踏みにじっているような言動を言います。これには、自分の気持ちや考えを言わないだけでなく、あいまいな言い方をしたり言い訳がましく言ったり、他人に無視されやすい消極的な態度や小さな声で言うことも含まれます。
このような言い方は、一見相手を立てているようだったり、相手に配慮しているように見えますが、自分の気持にも不正直で、相手に対しても率直ではありません。

したがって非主張的な言動をした後は、「自分はやっぱりだめだ」といった劣等感や、「どうせ言っ ても分かってもらえないに決まっている」といった諦めの気持ちが付きまといます。また、相手に対しては、「譲ってあげたんだ」といった恩着せがましい気持ちや、「人の気も知らないで」といった恨みがましい気持ちが残ります。

■攻撃的自己表現

「攻撃的」とは、自分の意見や考え・気持をはっきりと言うことで、自分の言論の自由を守り、自分の人権のために自ら立ち上がって自己主張しているのですが、相手の言い分や気持ちを無視、または軽視して結果的に相手に自分を押し付ける言動を言います。

そこには「自分が一番」とか「あなたはダメ」といった、その場の主導権を握り相手より優位に立とうとする態度や、「勝ち負け」で物事を決めようとする姿勢が見え隠れしていて自分にも不正直とも言えます。
つまり攻撃的とは単に暴力的に相手を責めたり大声で怒鳴ったりするだけではなく、相手の要求を無視して自分勝手な行動をとったり、巧妙に自分の欲求を相手に押し付けたり、相手を操作して 自分の思い通りに動かそうとしたりすることを言います。
このような言動をしている人は堂々としているように見える割にどこか防衛的で必要以上にいばったり強がっていたりします。
また自分の意向は通ってもその強引さのために後味が悪いことが多く、それが自分の本意ではなかったことに気付き後悔することになります。

■アサーティブな自己表現

「アサーティブ」とは自分も相手も大切にした自己表現です。自分の人権である言論の自由のためには自ら立ち上がろうとしますが、同時に相手の言論の自由も尊重しようとする態度があります。アサーティブな発言では、自分の気持ち、考え、信念などが率直に、その場にふさわしい方法で表現されます。
そして相手が同じように発言することを奨励します。その結果としては、お互いの意見が葛藤を起こすこともあり得ると考えます。葛藤が起こった時は、すぐさま折れて相手に譲ったり、相手が自分に同意してくれることを期待するのではなく、面倒がらずにお互いの意見を出し合って、譲ったり、譲られたりしながら、双方にとって納得のいく結論を出そうとするものです。

このような言動は、自信と余裕に満ちており、自分にすがすがしいだけでなく、相手にもさわやか な印象を与えます。また、相手は大切にされたという気持ちを持つと同時に、二人の努力に対して誇らしい気持ちを持つでしょう。

2.自己表現の3つのタイプ

自己表現には大きく分けて3つのタイプがあります。
下の設問をみてあなたならどう対応しますか。(1)~(3)の中から選んでください。

Q.電車の切符を買うため、列に並んでいたところ、自分の前に横から他の人が割り込んできました。この時あなたはどう対応しますか?
(1) 内心ムッとしたが、相手には何も言わない。
(2) 怒りを感じて、相手が割り込んだことに対して怒鳴り、列からどかせようとする。
(3) 自分が先に並んでいたことを相手に伝えた後、丁寧に、しかしはっきりと後ろに並んでほしいことを頼む。
以上、(1)~(3)が 3つのタイプの例です。

(1)のように自分の気持ちや考えを表現しなかったり、曖昧にした言い方を非主張的(ノン・アサーティブ、受け身的)な表現といいます。
(2)は自分の考えや意見ははっきり言いますが、自分の言い分を相手に押し付ける言動で、このような表現を攻撃的(アグレッシブ)な表現といいます。またこのような表現は相手の言い分を軽視(又は無視)することにもなります。それに対して(3)は、自分の意見を率直に正直に言う表現で、このような表現をアサーティブな表 現と言います。そこには相手の異なる意見もあること、葛藤が生じることも覚悟していて、歩み寄れるならそうしようという気持ちも持ち合わせています。

図1

3.アサーションを用いてコミュニケーションを行う上でのポイント

アサーションには、大切な5つのポイントがあると考えられています。
アサーションというのは、言葉の選び方とか、言い方だけではないのです。

■自分の正直な気持ちに気づく。

「こうあるべき」とか「こうしなければならない」というところで修正したものを、自分の気持ちと勘違いしてしまうことが多いですが、
頭で考え、修正する前の自分の気持ちをまず、感じ取りましょう。

■自分の正直な気持ちを大切にし、ごまかしたり否定したりしない。

「自分の正直な気持ち」を修正しないことは、その気持ちに誠実であるということ。
そしてそれは、自分を偽らないで相手に接するということで、
相手に対して誠実に接することにもつながります。

■自分も相手も対等な関係であることをしっかりおさえておく。

相手と向き合うときには、自分も相手も尊重します。
つまり、相手を見下したり、自分を卑下したりしないで対等に接します。

■伝えたいことを屈折させずに表現する

人に自分の気持ちや要求を伝えるときには、どなったり、弁解したり、遠回しに言ったりしないで、率直に表現することが大切です。

■表現したことについて、自分を責めたり不愉快になったりしない

自分の気持ちや要求を表現した結果、自分が望んでいない反応を相手が返す場合もあり得ます。でも、相手がどう受け取りどう反応するかは、相手の領域。
その反応によって、表現をした自分を責めたり不愉快になったりしないことは大切なことです。

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