同友会メディカルニュース

2011年11月号
大腸がん対策について

生活習慣の欧米化と共に大腸がんが増加していることが指摘されていますが、国立がん研究センターが発表している最新のデータによると、大腸がんの死亡率は男性3位、女性1位となっています。女性のがんとしては、乳がんや子宮頚がんがクローズアップされており罹患率では乳がんは1位なのですが、大腸がんは症状もわかりにくいため、発見時には転移をしているなど病状が進んでしまっていることも多くみられ、残念ながら死亡率では乳がんよりも上位に位置しています。

このような中で、厚生労働省も大腸がん死亡率減少を目指して便潜血検査による健診を強く推奨していますが、米国では肺がんについで大腸がんが死亡原因の2位を占めるため、そのスクリーニングにも力を入れています。最近発表されたCDC(Centers for Disease Control and Prevention, 米国疾患予防管理センター)の報告によると、大腸がんの新規発症率および死亡率は低下してきており、2003年から2007年の間に大腸がん患者数は66,000人減少し、死亡者数も32,000人の減少を認め、これらの約半数は検診による成果だとしています。特に各州の分析では、検診受診率が高かった州で大幅な死亡率の低下を見ています。一方で、いまだに50~70才の約1/3で推奨される検診を受けていないことに対して警鐘をならしています。

【リンク:http://www.cdc.gov/vitalsigns/CancerScreening/

このように大腸がんの便潜血反応によるスクリーニングは死亡率抑制効果がはっきりしているばかりでなく、将来の医療費抑制にも重要な役割を果たすことが海外の研究グループからの報告で示唆されています。進行したがんでは高価な抗がん剤を使用するなどして治療費が高額になってしまいますが、早期のがんでは比較的小額で済みます。大腸がん検診により、より早期に大腸がんを発見することで進行がんに対する抗がん剤治療などの費用を削減することができ、これは検診に要する費用を上回ることが示されています。進行がんの治療方法が進歩することは歓迎すべきことではありますが、基本は早期の段階で発見し、より負担の少ない方法で治療することが大切です。(J Nrl Cancer Inst 2009; 101: 1412-1422)

大腸がん検診の方法については、便潜血検査以外にも内視鏡検査やバリウムを用いた注腸検査に加えて、最近ではCTを用いたコロノグラフィと呼ばれる検査方法があります。これらの方法は、前処置で腸管洗浄液を飲む必要があるなど検査に伴う苦痛が少なからずあり、集団に対するスクリーニング方法としては適していませんが、がん自体を映し出すため便潜血検査よりも検査精度の高いものになります。アメリカのガイドラインでは50歳以上に対して、内視鏡は10年に一回、注腸とCTコロノグラフィは5年に一回の実施を推奨しています。(CA Cancer J Clin 2008; 588: 130-160)一方で、肛門から指を挿入して直腸のがんやポリープを触診する直腸指診は、死亡率減少効果がないことを示す証拠があるため、厚生労働省のガイドラインでは実施すべきでない検診方法とされています。

また、一次検診で異常が指摘されているにもかかわらず、二次検査を受けなかったためにがんが進行してしまうこともよく経験されます。便潜血反応が陽性であった方は、内視鏡もしくは注腸検査を行うことではじめて検診全体が終了すると考え、必ず二次検査をお受けください。大腸検査は大変なのではないかと考えたり、痔による出血かもしれないと自己判断してそのまま様子を見ている方もいらっしゃいます。しかし、便潜血が陽性なだけでは、大腸がんからの出血なのか、痔など他の要因によるものかは判断がつかないため、二次検査を行わなければ便潜血検査による検診を受ける意味がなくなってしまいます。早期発見・早期治療は患者さん本人が良好な治療成績を得られることにより、社会的損失を回避できることのみならず、医療経済上も大変重要なアプローチですので、一次検診、二次検査をしっかりと行うことを心がけてください。

春日クリニック 内視鏡検査のご案内

春日クリニックでは大腸内視鏡検査を実施しております。

大腸がんの発見のみならず、大腸ポリープがある場合にはポリープ切除術を実施することも可能です。

大腸内視鏡の実施をご希望の方は、スタッフまでご確認いただくか、春日クリニック(TEL:03-3813-0080)までご連絡ください。

内視鏡検査

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