同友会メディカルニュース

2023年3月号
新型コロナの影響でメタボはどうなった?(第二報)

新型コロナの影響でメタボはどうなった?(第二報)

新型コロナウイルスが社会に現れてからもう4回目の春を迎え、感染第8波の中でも感染法上5類への移行が間もなく予定されるなど、長く続いたコロナ禍にあってようやくこの感染症と共存する社会が見えつつあります。最近の報道では名称の変更(コロナウイルス感染症2019)も検討されており、そろそろ「新型」という言葉も合わなくなってきているようです。

ここに至るまでに幾度となく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出され、その度に私たちの行動が大きく制限を受けたのはご存じのとおりですが、当会の健診受診者のデータを分析したところ、初めて緊急事態宣言が出された2020年度においてメタボリックシンドローム(以下メタボ)の基準該当者の増加率が例年の2倍以上に達したことが明らかになり、関連学会や各種メディアを通じて報告するとともに、2022年4月号のメディカルニュースでもご紹介させて頂きました。その後もデータの蓄積を続けこの度2021年度の集計結果も明らかになりましたので、第二報としてお伝えしたいと思います。果たして更に悪化が続いたのか、それとも踏みとどまって改善の兆しが見られたのでしょうか?

調査方法は前回と同様で、メタボの判定に必要な項目を全て含んだ健康診断を前年度から連続して受けられた受診者を対象に、1年間でどのような変化が見られたかを年度ごとの集団で比較しました。持病がなくても健診は毎年受診される方が多いため、このような調査に適しています。流行前の2018・19年度から流行後の2020・21年度までの4年間で延べ58万人余り、各年度で12万~15万人の方を対象とする大規模な調査となりました。

メタボ該当者の増加率は2020年度に急激に上昇した後、21年度には大幅に減速

第一報の記事でも述べましたが、メタボの該当者自体は加齢によっても変動するので、「例年と比較して対象年度の増減率に変化があったか」が重要な視点となります。会社の健診を受けられる年代であればコロナ以前は男女共に年率6~8%程度増加するのが一般的でしたが、2020年度は既報の通り13~17%増と例年の2倍以上の増加率となったあと、翌21年度には男性は前年比ほぼ横ばいの+0.1%、女性も+6.6%と増加はしているもののその勢いは前年より大幅に弱まり、コロナ前よりむしろ低い水準にとどまったことが分かりました(図1)。

メタボ基準該当者の前年比増加率

項目別では20年度に中性脂肪と血圧の悪化が目立ち、21年度の改善は男性優位

メタボリックシンドロームの診断基準に用いられる項目は腹囲、中性脂肪、HDL(善玉)コレステロール、収縮期・拡張期血圧、空腹時血糖値ですので、メタボ基準該当者の変動はこれらの項目の増減で説明が付けられるはずです。コロナ禍以後も例外的に改善が続いている空腹時血糖以外は、いずれの項目も20年度に一旦悪化し、21年度には改善傾向にあることが伺えます(図2)。その傾向は中性脂肪と血圧で特に顕著で、腹囲も含めて女性の方が男性より20年度の悪化が目立ち、また21年度の改善も男性ほどではないものが多いようです。

図2 メタボ診断基準項目別の増加率
画像をクリックすると大きな図が開きます

生活習慣の改善意欲が回復、治療介入も増加

こうしたデータの変動の背景には、やはり受診者の行動や意識の持ち方が少なからず影響していることが考えられます。図3は今回の調査対象となった受診者の方々の、問診結果に基づいた生活習慣や意識の変化をまとめたものです。

コロナ禍における生活習慣の変化(前年比増減幅)
画像をクリックすると大きな図が開きます

まず男性・女性とも、「半年以上改善に取り組んでいる」と回答された方が、20年度はブレーキがかかりましたが21年度に大きく増えています。緊急事態宣言が発令されるようになって2年目に入り、自ら改善に取り組もうとしている姿が伺えます。

どのように取り組んでいるかですが、男女ともに飲酒の機会や一回当たりの飲酒量は20年度、21年度と2年続けて大きく改善しています。コロナ禍で夜の飲食の機会が減ったことを利用して引き続き節酒に努めており、その結果として朝の空腹時血糖の改善に繋がっている様子が伺えます。また脂質の服薬をされている方が、21年度になってそれまでより大きく増えています。今回の図にはありませんが実は血圧も同様の傾向であり、いずれも20年度の検査値で大幅な悪化を認めた項目ですので、20年度の健診で指摘を受けて治療を開始され、そのことが21年度の改善につながっている可能性があります。

男女で少し差が見られたのは歩行と運動の習慣です。男性はコロナ流行後に減った運動の代わりに歩く習慣を増やし続けているようですが、女性は歩行・運動習慣共に21年度は20年度よりさらに悪化しています。学校や園での流行を受けて育児対応の負担が続いているといった要因もあるかもしれませんが、この違いが21年度のメタボ関連指標の改善度において男女に差が生じている一つの要因とも考えられます。

社会の変化に速やかに対応するためにも健康診断の活用を

腹囲や体重と違って血圧や脂質の悪化は自分ではなかなか気づきにくいことから、健康診断を受けてその結果を知り、指導や受診勧奨を受けたことが本人の自覚とモチベーションをもたらし、有効な行動変容に繋がったものと考えられます。健診事業に携わる私たちにとっても健康診断がコロナ禍のような急激な環境変化にも対応しうる有用なツールであることが確認できたことは良かったと感じており、これからも皆様に積極的な活用をよびかけていきたいと思います。

今後感染法上5類への見直しが進めば行動制限がより緩和され、これまで蓄積された反動の顕在化や、意識の更なる変化も予想されます。私たちも健康診断の一層の啓蒙と並行して調査を継続し、要因の分析と効果的な対策に繋げることでこれからも社会に貢献して参りたいと考えています。

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