同友会メディカルニュース

2019年4月号
梅雨に向けてダニ対策を!

だに

はじめに

近年、アレルギーの病気をもつ人が増加しています。花粉症は春のスギやヒノキ、秋のブタクサやイネといった季節性が多いですが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、結膜炎、鼻炎、じんましん等が通年ある方は、ひょっとしたらダニが悪さをしているかもしれません。血液検査でアレルギー反応の概要をつかむことができますので、症状がある方は一度受けてみることをお勧めします(参照:http://www.kasuga-clinic.com/option_allergy/)。

アレルギーは遺伝と環境の相互作用によって発症しますが、冷暖房の普及やサッシ等の質の向上で住宅の気密性が高くなり、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に触れる機会が増していることが問題となっています。国内のさまざまな室内環境アレルゲンの中で、最も重要なのがダニです。ダニは1年のうち春から梅雨にかけて最も増加しますので、ダニについてよく理解し適切な対策をとりましょう。

ダニを知ろう

ハウスダストがアレルギーの原因になることは200年以上前から知られていましたが、その中の主要なアレルゲンがダニによるものだとわかったのは1960年代です。数万種類いるダニの中で日本で問題となるのはチリダニ科のヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニで、特に排泄物由来のDer p1/Der f1,虫体由来のDer p2/Der f2という物質は主要なアレルゲンとして知られています。気温25℃、湿度75%前後で最もよく繁殖し、孵化して1か月で成虫になり、寿命は2~3か月で、その間にメスは約100個産卵します。湿度50%以下では繁殖しなくなります。

ダニのアレルゲンは掃除、寝具の上げ下げ、寝返りなどで空中に舞った塵の中の粒子を吸い込むことによって体内に侵入します。そして、日本の通常の家庭の中で最もたくさんダニが住みついているのが布団と枕です。よって、いかに寝具の中に住むダニを死滅させるか、そして死骸や排泄物をしっかり廃棄して空中に舞わせないことが重要になってきます。

ダニを死滅させよう

ダニは熱に弱く、50℃以上の温度で20~30分で死滅します。ではどうやってその状況を作るのでしょう?よく言われている方法の有効性を判定してみましょう。

  天日干し
ふとん内部に吸収された汗を乾燥させ、湿度を下げる効果はあります。ダニの活動性は低下しますが、温度はふとん表面しか上がらず、ダニはふとん内部に移動するので死滅はしません。
×  ふとん叩き
叩いた衝撃でダニが死にそうな印象はありますが、これはしてはいけません。貯まっていたダニの死骸や排泄物がふとん表面に付着したり周囲に舞って、体内に入る機会が増えるだけです。
  ふとん用掃除機
ダニの死骸や排泄物はある程度吸引できますが、生きたダニは繊維に強力にしがみついており、ほとんど吸引できません。
  丸洗い
ダニは空気がなくても生息でき、水や洗剤でも死滅させることはできません。ただしダニのエサとなるフケや垢を落とすことはできます。
  ふとん乾燥機
ふとん全体を50℃以上に保つことができるタイプの乾燥機は有効です。家庭用ふとん乾燥機を用意するか、コインランドリーで高温乾燥機を使用しましょう。ただし羽毛ふとんは痛むことがあるので注意が必要です。

高温でダニを死滅させたらそれで終わりではありません。布団にはダニの死骸や排泄物などが残っていますので、必ず掃除機で吸い取りましょう。また、掃除機の排気口を布団に向けないように注意しましょう。ホコリが舞い散って、ダニの死骸や糞が再び付着してしまいます。

ダニが繁殖しにくい環境にしよう

さまざまなアレルギー関連疾患のガイドラインでも、ダニが繁殖しにくい環境を保つことが予防につながると明記されています。以下、推奨されていることをまとめます。

  1. 室内がダニが繁殖しやすい室温25℃以上、湿度60%以上になるのを避け、清潔維持や通気を心がける。
  2. 絨毯や布製ソファなどの使用はなるべく避け、フローリングにすることが望ましい。
  3. 室内の掃除は掃除機を1m2あたり20秒かけて週2回以上行う。塵の舞いやすいフローリングでは掃除機の前に拭き掃除を行う。
  4. 寝具の管理は重要であり、寝具への掃除機かけは1m2あたり20秒かけて週1回以上行う。シーツや寝具はこまめに交換や洗濯することが望ましい。
  5. ベッドのマット、ふとん、枕に優れた品質の防ダニシーツを使用する。
  6. 年1回は室内の徹底した大掃除を行う。
  7. 室内ペット(犬、猫、うさぎ、げっ歯類など)飼育を避ける。

ダニアレルギーの治療

ダニアレルギーに対する治療は、症状を抑える対症療法とアレルギー反応を起こさせなくするアレルゲン免疫療法の2つがあります。対症療法では抗アレルギー薬やステロイドを使用し、つらい症状を緩和させます。一方、アレルゲン免疫療法は減感作療法ともいい、ダニアレルゲンを薄めた薬を繰り返し長期にわたって投与し、体がダニアレルゲンに慣れて反応を起こさなくなるように体質を変える治療です。皮下注射と舌下療法(舌の下に錠剤を置いてゆっくり内服する)があります。2015年に保険適用となりましたが、治療に3年以上かかる上、強烈なアレルギー反応が出て命にかかわることも起こり得るため、緊急時に対応可能な病院でアレルギー治療に精通した医師が行う必要があります。

終わりに

対症療法を行うにせよ、アレルゲン免疫療法を行うにせよ、ダニを増殖させないことが大前提です。継続的にしっかりダニ対策をして、ジトジトした梅雨を乗りきりましょう!

参考文献

  • 鼻アレルギー診療ガイドライン -通年性鼻炎と花粉症- 2016年版(改訂第8版). 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会
  • 喘息予防・管理ガイドライン 2018. 喘息予防・管理ガイドライン2018作成委員
  • 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017. 日本小児アレルギー学会
  • ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版). 日本アレルギー学会
  • 須藤千春:チリダニ類の生物学的特徴と防除対策. アレルギーの臨床 17:513-518,1998
  • 灰田美知子:ダニアレルゲン. 綜合臨床 52:483-492, 2003
  • 安枝 浩:ダニアレルゲンの免疫生物学とアレルギー疾患. アレルギー 57:807-815, 2008
  • 榎本雅夫:気道アレルギーにおける患者指導(ダニ対策、花粉対策) アレルギー 58:1574-1580, 2009

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