同友会メディカルニュース

2015年8月号
乳がん検診を受けましょう!

受診者様の既往歴や家族歴を見ていて、乳がんという病名に接することが非常に多くなっています。乳がん検診については当会のホームページ(1)でも紹介していますが、今回は少し違った角度から乳がんについてお話してみることにします。

乳がんは最近著明に罹患数が増えている癌の代表ともいえます。日本人女性においては最も罹患率の高い癌で、2010年には実に76000人が乳がんと診断されました(2)。乳癌検診学会の統計では癌発見率は0.2%程度で、受診者10000人当たり20人は見つかっていることになります(3)。

当施設においても表1に示すように年ごとに発見者数は増えていることが分かります。一方、がん死亡という観点からみると、2013年には乳がんによる総死亡者数は13000人あまり(4)で、部位別では大腸、肺、胃、膵臓に次いで5番目。つまり罹患率は高いけれども、比較的治りやすいものと言えるかもしれません。

表1. 当会におけるがん発見者数の推移
部位 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度
食道がん・胃がん 24 24 23 38 31
肺がん 7 9 7 7 5
乳がん 16 18 20 45 42
子宮がん・卵巣がん 5 9 7 2 7
大腸がん 19 18 14 23 29
その他のがん 13 13 13 13 13
合計 84 88 89 129 129
  • (注)精密検査によるがんの確定診断結果が、紹介状等により当会で確認されているもののみを集計

さて、乳腺は腺葉という単位(片方の乳腺に15~20個存在する)からできており、さらに乳汁を分泌する小葉とそれを通す乳管という部分に分けられます。小葉は細乳管(乳汁を出す組織)と小葉内間質から成ります。細乳管で作られた乳汁は乳管を通り、そして各乳管が束ねられた主乳管を経、最後に乳頭から外に出されてゆくのです(5)。

乳がんの中で最も多いのはこの乳管から発生するもの(乳管癌)で、小葉から発生する癌(小葉癌)も数少ないながら存在します。小葉から主乳管に至る組織は上皮、筋上皮、基底膜という三層構造になっており、上皮から出た癌細胞がこの基底膜を超えていないものを非浸潤癌、突き破ったものを浸潤癌と称します。一方、早期癌というのは非浸潤癌と、浸潤癌でも腫瘍の大きさが2cm以下で、かつリンパ節転移や遠隔転移がないものと定義づけられています(6)。

図1

乳がん検診は大別して二つの器械で検査します。即ちマンモグラフィと超音波検査。マンモグラフィはX線を使って、乳腺組織のX線透過性の違いで病変を映し出します。乳腺組織は妊娠可能な時期ほど発達しており、20~30歳代の受診者ではマンモグラフィで検査すると全体に白っぽく描出されることが多く、逆に病変組織の描出を難しくしています。つまり若い人では診断能力は意外に低く、50歳代以降にお勧めしたい検査になります。超音波検査はその名の通り、超音波を皮膚の上から当て、(乳腺)組織からの跳ね返りを画像に合成して検査してゆきます。腫瘤を形成するがんでは、その見え方の違いにより的確に診断することが可能です。しかし、ある程度の大きさになるまでに腫瘤を形成しないがんもありますので、その場合は役立ちません。

ではどのように乳がん検診を受ければよいのでしょうか?当会で推奨している乳がん検診の方法は、まずは毎年マンモグラフィ検査と乳房超音波検査を両方受けること。どちらか一方で済ませたいと考える場合は、20~30歳代は乳房超音波検査、50歳以上はマンモグラフィ検査、40歳代はマンモグラフィ検査と乳房超音波検査を毎年交互に受けるというものです。乳房の視診、触診のみの検査では小さな癌は分かりにくいため薦められません。必ずマンモグラフィか乳房超音波検査と併せて検査されるようお薦めします。

マンモグラフィも乳房超音波検査もカテゴリー分類というものを使っています。表2にカテゴリー分類の解釈と、(マンモグラフィに限って)実際に癌と診断された方の割合を示してみました(7)。カテゴリー1は正常、逆にカテゴリー5はほぼ癌だと考えられます。カテゴリー2は、所見は認められるもののほぼ良性のものと診断されます。これに対してカテゴリー3は良性、しかし悪性のものも否定できない、カテゴリー4は悪性の疑いが強いと診断しますので、カテゴリー5と共に専門医での二次検査をお勧めしています。

表2. マンモグラフィのカテゴリー分類と、その中の悪性の頻度(参考サイト7を改編)
カテゴリー 定義 悪性の割合
1 異常なし 0.05%
2 良性 0.10%
3 良性、しかし悪性を否定できない 8%
4 悪性の疑い 41%
5 ほぼ悪性 100%

乳がん検診を考える上で重要なことは、検診そのものを受ける人が比較的少ないことでしょうか。市町村が主催する乳がん検診においては20~30%程度の低い受診率と報告されています(8)。2014年度に当会においては、人間ドック、来院健診を含めて46000人程度の女性受診者がおられました。その中で乳がん検診を受けた方は24000人くらいで、50%を少し超える受診率でした。

もう一つ大事なことは、二次検査を勧められたら、必ず専門医を受診していただきたいことです。乳がんを疑われる受診者の方と話をする機会がありますが、その中で気が付くことは、必要以上に乳がんを恐がっておられること方が多いこと。「先生の話を聞かなかったら、二次検査受診を勧める通知が来ても、病院に行かなかったと思います」と言われることが多いように感じます。

冒頭に述べたように、乳がんは治りやすい癌で、早期に発見すると、乳房を残して治癒させることも可能です。がん検診は当会でも、また市区町村が主体になっても行っていますので、是非とも毎年お受けになるようお勧めします。

参考文献・サイト:

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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