季刊誌「お元気ですか」のご案内

2024年4月号

井村 雅代さん

「私の健康法」

「やりきった」ではなく、次から次へと目標を立てていく。
それこそが良い人生だって思うんです。

公益社団法人井村アーティスティックスイミング
代表理事
井村 雅代さん

―今回はアーティスティックスイミング指導者の井村雅代さんにご登場いただきました。日本のアーティスティックスイミング会を長年牽引され、その基礎を築いた実績や功績の大きさから「シンクロ界の母」「メダル請負人」とも称される井村様に、指導者としての心構えや健康を維持する秘訣についてお話を伺いました。

正しいと思っている事を
振り返ってみるのが大事

 アーティスティック水泳は2023年から新しいルールになりました。その瞬間から、それまでの「世界一」というものは何も効力を発揮しなくなりました。本当に仕切り直しです。それでも、私が専属のコーチを務める乾選手は「新しいルールで世界一を目指したい」と言ってくれました。あれだけ日本のアーティスティック水泳界に貢献をしてくれたのだから、その思いを叶えたい。そう目標を掲げて、彼女を世界一にすることができました。

 全く新しい競技になったので、どう戦ってよいのか分かりませんでした。それでも絶対世界一を取ってやろうと決意をしたので、プールサイドにパソコンを持ち込み、難易度を計算しながら演技のルーティンを作りました。この年になってそんな事をする日が来るとは思いもしませんでしたが、この新ルールのおかげで非常に頭が活性化しました。高い難易度の技を組み込み、その技が認定されれば有利になりますが、それでいて現実的に可能かどうかも考えなければなりません。

 「コントローラー」という人が3人いて、演技終了後にモニターを見ながら演技中怪しいと思った部分のチェックをしていくわけですが、3回、普通のスピードで映像を見るんです。そして3人のコントローラーのうち2人がノーと言ったらその技はダメです。コントローラーが普通のスピードで見るならば、私はスローモーションで見てやろうと思いました。するとある時、ハッとしました。自分を疑うことが大事なんだと気づいたんです。例えば、体の角度を45度にする必要がある技の場合、自分としてはこれで正しいと、ずっと思っていて、選手に「これは正しくできてる」「それは低いよ」等と自分の感覚で指導していました。でも、それが本当に正しいのか…。

 その時に、分度器を買おうと思いました。プールサイドとか、基準となる水平線をうまく使って、分度器で見た方が早いと思って。それで測ったら、やっぱり癖があるって分かったんです。日常的に正しいと思ってやっていることが、本当に正しいのかと、たまに振り返ることって大事なんだと思いました。

プレッシャーを受けるのは
「選ばれた人」だからこそ

 プレッシャーっていうのは、選ばれた人にこそかかるものだって教えています。「きっと良い成績を出してくれる」と、誰かの期待を受けているからこそ、プレッシャーがかかるんです。もちろん期待をかける相手は誰でもいいわけではありません。「この人だったらやってくれそう」と期待をかけられる。あなたは選ばれた人なんだから、だからこそ期待をしっかり受け止めなさいと言うんです。

 本当に押しつぶされそうなくらいにプレッシャーがかかった時は「私は私なんだ。私ができることを精一杯やったから、それでいいんだ」と思うこと。もし、精一杯やっていない人は、自分に嘘をついているから心が揺れてしまう。だからこそ毎日ちゃんとやる。一生懸命生きて、一生懸命練習しなきゃいけない。プレッシャーから逃げずに、しっかり背負いなさいと教えています。

自分の体と語り合う

 私たちの職業病は腰痛や膝痛。硬いプールサイドを長く歩くからです。若い人は、暑いので短パンにゴム草履とかじゃないですか。私は昔から絶対にプールサイドではスニーカー、それも良いものを履きます。プールサイドの床はコンクリートよりも硬いんです。そんな硬い床の上をずっと歩くわけですから。若い時からすごく気を付けて、一番衝撃を吸収するスニーカーを選んで履いて、少しでもへたってきたら新しいものを買う。そうやって腰痛や膝痛を予防してきました。

 ここ何十年、一度も練習を休んだことがないんです。以前は遠征に行くたびに必ず熱を出していましたが、歳を重ねるにつれて熱は出なくなりました。それは自分の体と語り合うようになったから。ちょっと頭が痛いとか、体が冷えたと思ったら、その時はご飯も食べずに、お風呂も入らずに服をたくさん着て寝ちゃう。とにかく、なんか変だなとか、ちょっと体調が怪しいなって思ったら、その時最善のことをして、明日寝込まなくてもいいように夜の時間帯を過ごすようにしています。

 私も70歳を過ぎましたが、70年間故障せずに動き続ける家電なんてないじゃないですか。でも身体はすごく長持ちさせなきゃいけない。ちゃんと動かし続けるにはメンテナンスは当然だと思っています。3か月に1度くらい血液検査を受けていますし、人間ドックも、もう何十年も続けて受けています。

目標を持って生きること
それが心の健康の秘訣

 健康であるためには、まず心が健康でなければダメだと思うんです。だから私は、常に目標を持つようにしています。逆に、何も目標がないなんて許せない。私の一番の健康の秘訣は、目標を持って生きること。たとえば、今日の午前中にあの荷物を片付けようとか、どんな小さな目標でも良い。そして1年かけて実行するような大きな目標も持つことです。

 いつも目標を持ち続け、一つずつ達成して、そしてまた新たな目標を立てていくと、いつか、目標の途中で人生の終わりを迎えます。その時に「志半ばであの人は逝ったね」って言われたい。「やりきった」ではなく、次から次へと目標を立てて、そして志半ばで逝く。それこそが良い人生だって思うんです。(談)

井村 雅代さん

<プロフィール>
井村雅代(いむらまさよ)さん
1950年生まれ。大阪府出身。
中学生からシンクロを始め、日本選手権で二度優勝。
1974年よりシンクロ指導者として活動し、1978年からは日本代表コーチに就任。メダリストを次々と育てられた。
現在は公益社団法人井村アーティスティックスイミング代表理事を務める。

詳細を見る

過去に発行した季刊誌をPDF形式で閲覧することができます。

掲載されている内容は発行当時のものです。登場されている方の肩書きや、料金表示、キャンペーン内容等について最新の内容とは異なる場合がございます。

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

同友会メディカルニュース

小石川の健康散歩道

保健師コラム

第44回
がん検診の受診はお済みでしょうか?~NEW
第43回
「座り過ぎ」に要注意!   ~毎日コツコツ、病気予防~
第42回
味噌汁は健康づくりの救世主?!
      ~味噌汁の塩分量と栄養素どっちをとる?~
第41回
食べる・育てる・観る ガーデニングの良いところ
第40回
推しの力!
第39回
炭酸飲料?お茶?あなたは何を飲みますか?
第38回
気になる喉の乾燥の防ぎ方
第37回
香りやにおい、マスク着用の日々だからこそ、意識してみませんか。
第36回
こころを整える 〜リフレーミングをとりいれて〜
第35回
パンダと一緒に健康に!?
第34回
好きな香りはありますか?
第33回
快眠のための寝具について
第32回
マスクと肌トラブル
第31回
腸内環境を整えよう~腸活のススメ~
第30回
手洗い・消毒後は、保湿をセットで手荒れを予防
第29回
心を満たす食卓が鍵
第28回
『コロナ太り』を解消!要因を知って具体的な対策に
第27回
外出自粛期間を乗り切るコツ 運動編
第26回
飛行機内の湿度は砂漠よりも低い?!
第25回
「お料理」のススメ
第24回
階段利用で歩数UP・プチ筋トレ♪
第23回
釣って食べる!海釣りのオススメ~船酔い(乗り物)酔い対策編~
第22回
素敵な和菓子
第21回
『デンタルケアから始める健康管理』
第20回
『気にしていますか? 夜間熱中症』
第19回
本当の血圧はどれくらい? ‐意外と知らない血圧上昇の原因‐
第18回
五感を働かせ、楽しみながらの英語習得!認知症予防にも効果的!?
第17回
「素敵な靴は、素敵な場所に連れて行ってくれる」って本当?!
第16回
今、スポーツ観戦がアツイ!
第15回
釣って食べる!海釣りのオススメ ~運動編~
第14回
太鼓に感動!
第13回
運動前の糖質摂取―大事なのは種類とタイミング―
第12回
体質は遺伝する、習慣は伝染する。
第11回
新生活を迎える時ほど大切に!家族・身近な相手とのコミュニケーション
第10回
もっと気軽に健康相談♪
第9回
食材で季節を感じてみませんか?
第8回
夏の日差しを楽しむために
第7回
休日は緑を求めて…
第6回
お風呂好きは日本人だけ?
第5回
気分の高揚を求めて
第4回
みなさん、趣味はありますか?
第3回
休み明けの朝だってすっきりさわやか、そんな生活への...
第2回
忙しい日々こそ、1日をふりかえること。
第1回
少しの工夫で散歩が変わる!

お元気ですか

季刊誌 お元気ですか

2024年10月号
  • 私の健康法
    ゴルフトーナメントプロデューサー 戸張 捷さん
  • 鼠径ヘルニアについて
    順天堂大学医学部附属順天堂医院
    大腸・肛門外科 助教 雨宮 浩太
    ドクターによる健康に役立つ医学情報をご紹介いたします。
  • 糖尿病について考えてみませんか?
  • 自宅でできる足の筋力トレーニング
  • 更年期の女性だけじゃない?「更年期障害」
  • 春日クリニック 特別ドック2024年4月1日フロアリニューアル

ページトップ