季刊誌「お元気ですか」2025年4月号

>野村 萬斎(のむら まんさい)さん

「私の健康法」

人に喜んでもらう事が好きだとう事が根本にありますし、新しい事や経験したことのないものにもチャレンジしてみたい

狂言師
野村 萬斎さん

――今回は狂言師の野村萬斎さんにご登場いただきました。狂言師として様々な伝統芸能の世界でご活躍され、さらに俳優としてドラマ・映画・舞台、そしてテレビコマーシャルなど幅広くご活躍されている萬斎さんに、日々心掛けておられる健康法や舞台の上での心構えなどについてお話しいただきました。

狂言の世界は下半身が重要

 普段の生活があまりにも忙しすぎて、欠食してしまうことが多いんです。一日二食という日も少なくないですし、絶対的に食べる量が少ないので、体に良くないなとは思っています。健康法という意味では私の場合、野菜中心に食べているという事と、ちょっとタンパク質が最近足りていないと感じているので、トレーニングの前などにプロテインを飲むようにしています。

 年齢を重ねると多くの方がそうかもしれませんが、やはり脂っこいものがだんだん苦手になってきますね。お肉も食べますけれど、豚が多いです。野村家の伝統というんですかね、鱈鍋や豚鍋をよく食べるんです。湯豆腐を食べるときにも、鍋の中に鱈とか豚肉を入れたりするというのが慣例です。鱈や豚肉にはアミノ酸が含まれていると聞きますし。それから舞台が終わった後には良質なタンパク質と適度なビタミンを摂る事を心掛けています。

 また、年々心肺機能とか筋肉量が落ちているというのをすごく感じています。狂言の世界は下半身が重要で、私の父もよくその事を話していました。腰から下が重要で、あとは体幹も。インナーマッスルが強くなければいけません。そのためプロテインを飲んだり走ったりすると、バランスよく筋肉がついて体全体の調子が良くなると思います。
 昨年の秋に「釣狐」を演じましたが、舞台の上で激しく走り回る演目なので、その時にはお酒も控えました。しばらく禁酒したり、休肝日を作ったり。ただ、地方へ行ったり、お付き合いの場もありますので、そういうときにはいただくようにして、そのぶん家で食事をするときには飲まないとか、ノンアルコールビールにするとか、バランスをとるようにしていました。

腹から声を出すことでストレス発散になるんです

 健康法として特別に何かをしているわけではないのですが、舞台では型を使って腹から声を出して笑うということが多くあるので、それがストレスの発散にもなっていると思います。稽古はかなり厳しいものですが、舞台上で発散するというのが私にとってとても重要な事だと感じています。
 舞台の上では、常に緊張感を持った「構え」、腰を落として膝を前に出し、ちょっと前傾気味に立つんですね。体にあえて負荷をかけるのです。昔は武士道の流れで、お殿様に命じられたら、すぐにその場で演じなければなりませんでした。ストレッチなど準備をしてから演技という事ではお殿様を待たせてしまうことになりますから、いつでも演じられるように常に緊張した体勢でいたわけですが、私たちはもう少し近代的に、舞台の前は少しストレッチしたり血流を良くしたりするようにしています。
 体だけではなく、喉の管理も重要ですね。いきなり高い声を出そうとすると痛めてしまいますので、徐々に調子を上げていくようにします。冬場、とくにホテルなどで泊まる際は、乾燥しやすいので加湿器を利用するようにもしています。
 それでも、これまで何度も声を潰していますよ。狂言の舞台よりも、それ以外の現代劇に出演している時によく潰していました。例えば蜷川幸雄さんの芝居では皆ハイテンションで、観ている時にはなぜみんな、あんなに叫んでいるんだろうと思っていましたが、自分が出演した時もそういう風に演出されるものなんですね。蜷川さんの舞台では色々な経験をさせていただきましたが、ちょっと怒鳴り癖がつくというか、テンション高くしゃべりますので、やはり喉に負担がかかるのは確かですね。

色々な舞台や映像作品に挑戦を続けていきたい

 人に喜んでもらう事が好きだとう事が根本にありますし、自分自身新しい事や経験したことのないものにもチャレンジしてみたいという思いがあるんです。単純に言うと「あの人がやっている事ってかっこいいな。私もやってみたいな」という思いでしょうか。でも、それをそのまま自分がやったとしてもかっこよくならないので、どうすれば自分がかっこよくなれるかと、一度自分の中でバラバラにして咀嚼して、再構築をするというのかな。そういうことが好きなんですね。
 まだまだ色々な舞台や映像作品を作りたいと思っていますので、そういったものへの挑戦も続いていきます。私達の世界には40歳・50歳はハナタレ小僧という言葉がありますが、そういう意味では私もまだまだハナタレ小僧です。私の息子が力いっぱいやっているのと同じように、私が力いっぱいやっても若い人には体力では負けてしまうので、ちょっと違うステージに立つというのでしょうか。60歳からが本番だと言われていますし、そんなつもりで焦らずにやっていこうかなと思っています。
 高杉晋作の辞世の句をもじって「おもしろき こともなき世をおもしろく 生きぬいてこそおもしろかりけれ」を自分の辞世の句にしようと思っています。生き抜いてこそ面白いという人生を送れたらいいですね。

>野村 萬斎(のむら まんさい)さん

<プロフィール>
野村 萬斎(のむら まんさい)さん
1966年生。祖父・故六世野村万蔵及び父・野村万作に師事。重要無形文化財総合指定保持者。東京藝術大学音楽学部卒業。「狂言ござる乃座」主宰。
 国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、舞台『敦―山月記・名人伝―』『子午線の祀り』能狂言『鬼滅の刃』『ハムレット』など古典の技法を駆使した作品の演出で幅広く活躍。現在の日本の文化芸術を牽引するトップランナーのひとり。
芸術祭新人賞・優秀賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、朝日舞台芸術賞、紀伊國屋演劇賞、毎日芸術賞千田是也賞、読売演劇大賞最優秀作品賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞、松尾芸能賞大賞、2024年5月坪内逍遥大賞を受賞した。石川県立音楽堂アーティスティック・クリエイティブ・ディレクター。(公社)全国公立文化施設協会会長。

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